第1話 出会い
時は景気が良かった頃にさかのぼる。
バブルがはじけたとはいえ、
街には、パワーと笑顔が溢れていた。
マンモス級のディスコが賑やかで、
若者が60回ローンで車を買い、
女子大生が普通に海外旅行に行く。
そんな時代に二人は出会った。
東京郊外の百貨店。
輸入洋食器売り場に配属されていた美也子は
仕事に夢中の毎日を過ごしていた。
食器メーカーの新しい営業として、
隣にある国産食器売り場に通い始めた公彦は、
「マダムキラー」の特性を発揮して、
あっという間に売り子さんと仲良くなっていた。
美也子の部署は違ったが、食器売り場同士
協力体制でやる仕事も多く、
隣の国産食器売り場にも頻繁に出入りする。
なのであいさつくらいはする二人。
公彦の第一印象
「おっかねー姉ちゃん」
美也子の第一印象
「愛想の良すぎるナンパ男」
そう。
お互いの第一印象は、すこぶる悪かったのである。
あいさつ程度のまま、数か月後。
「見てみて~!限定解除、取ったんです~♪」
公彦がマダム達に免許を見せて回っている。
それにしても嬉しそうな公彦。
微笑ましい笑顔でほめる、マダム達。
いつの時代も素直な人は、好かれるのが定石。
美也子にもそれは聞こえてきた。
(へぇ~。あの人、バイク乗るんだ・・・。)
少しだけ公彦への興味アンテナが立った、美也子。
(どんなバイクに乗ってるのかなぁ。)
そしてある時、二人は急速に近づくのである。
~続く~
出会ったころの二人。
爽やかで、誰にでも笑顔で接する公彦。
バブルの恩恵に恵まれず、貧乏だったが
バイクはいつも所有していた。