第11話 二人旅4000km 後編

この旅行の目的地、エアーズロックを目指し

二人は広大な大地を走っていた。

 

1日にハンドルを切る回数は、数えるほど。
ぽつんとある、スタンド。

平坦で変わらない景色。

 

時々ラクダがいる。

その昔、運搬用に連れてこられたラクダが

野良化したらしく、大きい図体で

のんびり道を歩いていたりする。

ぶつかれば、こちらがケガをするだろう。

 

道の遠くに何かが見える。

牛が車と衝突し、道の真ん中に横たわっていた。

直前で慌ててブレーキをかけ、回避。

 

平原を走っていると、速度や距離感がマヒする。

対象物がどれだけ近くにあるのか分かりにくい。

危ないあぶない。

 

19世紀、

黄金郷があると夢見て内地に入った探検家達。

彼らが見た景色は、きっと今も変わらないのだろう。

 

地球は大きく、時はゆるやかに流れると、

思わずにはいられない。

 


どれだけ平らな国なんだろう。

ここは土と空しかない。

日本は、色・音・匂いがあふれ、

「四季」のあるありがたさを実感した。

 

遠くにエアーズロックが見えてきた。

 

(拝借画像)


「エアーズロックだぁーー!!」

ヘルメットの中で叫ぶ。

興奮せずにはいられなかった。


はじめは小さく見えた赤茶色の岩が、

近づくにつれ、どんどん大きくなっていく。


残念ながら、そのままエアーズロックの

そばまで行けない。

国立公園なので、料金所があり、

料金を払わないと入れないのだ。


そばにあるリゾートで、まずは宿を確保。

今ならまだサンセットに間に合う時間。

部屋に荷物を全部放り込み、エアーズロックへ向かった。


刻々と変わる空の色と併せて、

7色に染まるといわれるロック。

7色は見れなかったが、感動を呼ぶ夕暮れだった。

 


ツアーと違い、シャンパンもコーヒーもないサンセット。

好きな所で気が済むまで、二人で眺めていた。


リゾートは、久しぶりにマシなベットと食事があった。

しかし、人が多い。

日本語もたくさん飛び交っている。

なぜか戸惑う2人だった。


明日はエアーズロック登山。

実は数年前、美也子はここに来たことがある。

友人と旅行したのだが、その時は天候が悪く、

エアーズロック登山ができなかった。


登らないままでは一生後悔する。

その思いもあって、選んだ目的地。

天気もよさそうだ。

明日を楽しみに、早々眠りについた。


エアーズロック登山は、早朝にスタートする。

周りはほとんど日本の新婚カップル。

私たちも同じだが、格好がキタナイ。

少し恥ずかしいな、と思っていたら声をかけられた。


バイクで旅行ですか!いいですね~!

ボクも乗るんですよ!」

とある新婚のだんなさん。少ししゃべっていたら、

新妻が機嫌悪そうに見ていたので、その場を離れる。

 

無事、頂上に到着。


 

「写真おねがいしま~す♪」と

旅行者同士が交代でレンズを向けていた。


念願叶い、ご機嫌の美也子。

公彦も素晴らしい景色に感動していた。


「何か飛んでますよ!」

誰かが大きな声で言った。


なんだ?と振り返ったら、

オーストラリアドルが空を舞っている。


誰だ?と思ったら、美也子が飛ばしている!

ウエストポーチ型のお財布から、紙幣がヒラヒラ飛んでいた


慌てて回収したのだが、風の強い岩の上。

大盤振る舞いのお賽銭となった。


ロックから降り、少し離れたMt.オルガへ。

 

(拝借画像)

 

「風の谷」とも呼ばれるオルガ岩群。

神秘的・幻想的な景色を楽しめる。

エアーズロックより、こちらの方が心に残る場所だった。


夕方、またサンセットを見に行く。


明日はここを離れる。

旅の終わりは少し切ない。


好きな所で立ち止まれるバイク。

気ままな旅は、二人の性格に合っていたようだ。


バイクにまたがり、最後のRUNがスタートした。

最終目的地はアリススプリングス。

到着後、バイクを返却し、ケアンズへ。


この旅にはおまけがある。

ケアンズで気球に乗り、ダイビングをし、シューティング。


これはこれで楽しかったが、

色濃い思い出は、やはりバイク。


今は二人で走ることも少ないが、

またいつか、どこかへ旅に出ようか。

 

オーストラリア。

2人の夢の時間は終わった。

 

次のページ 第12話へ→

  

SHOP NAKAMURA トップページへ→