第17話 仲間とはいいものだ

VMAXが来てから、

走りたくて仕方のない美也子。


日曜と月曜の早朝に、よく走っていた。

朝9時頃には帰宅する。

そして、仕事。


たまのツーリングも、夜9時までには帰る約束。

行ける所が限られてしまうので、

お泊りツーに行きたいと言ってみた。


「3才になったらよし。」


2才の息子。

朝は母親がいなくても、機嫌がいいのだが、

夜寝るときは、美也子がいないとやはりダメ。


そんな息子をかわいいと思ってみたり、

面倒だなと思ってみたり。

まったく我がままな母親である。


インターネット上で繋がっている

「VMAXメーリングリスト」にも入った。

メールで届くその世界はとても新鮮。

VMAX乗りは、いろいろな人がいて面白い。

「オフ会」も活発に行われていた。


ある時、美也子の実家近くの人が主催で

「奥多摩朝錬」をするという。


どんな人が来るんだろう?

私が行ってもいいのかな?

コワい人がいたら、いやだな。


不安な気持ちより、馴染みのある場所に

VMAXで行きたい気持ちが勝り、

思い切って行ってみることにした。


朝2時に起きて、出発する。

暗闇の中、関越道を走った。


期待と不安。

新しい出会いは緊張するものだ。


集合場所に到着した。

黒ずくめで大柄な方々が一斉に振り向いた。


・・・コワイ。


今でも思う。

バイク乗りが集まると、コワイ。


黒い装束がイケナイと思うのだ。

いっそ皆が白とかピンクだったら、

社会の目も変わるかも知れない。

そう言っている自分も真っ黒なのだけど。


朝錬に来ていた人達は、

しゃべってみれば、ナイス・ガイな人達ばかりで

とてもやさしくしてくれた。


またある日、

バイク雑誌の撮影会が行われると聞き、

美也子は再度、東京に向かった。


 

東京の大黒パーキングに集まったVMAX達。

到着後、アンケートを書き、順番に撮影してもらう。


まだ知り合いの少ない美也子。

まわりのお兄さん達を眺めながら、

静かに撮影の順番を待っていた。


短時間で何十台も撮らなくてはならない。

カメラマンは被写体が変わるたびに

「君はこうやって撮ろうか」と指示を出してる。


美也子の番になった。


美也子を見たカメラマン。

少し考え、「バイクのそばに座って」と言う。


・・・はい?


「片ひざ立てて、手を置いて。」


うわぁ・・・めっちゃ恥ずかしいんですけど。

こういうの、苦手なんですけど。


「はい!笑って!!」


あのー。笑えません。

頬がひきつります。


「あ、もうちょっと背中立てて。」


超ムリ姿勢ですってば。

てか、恥ずかしすぎますってば。


「笑顔がカタイなぁー。」

「あっ!いい感じ!そのまま!」


も、もうイイです。

・・・早く終わってください!!!


そして雑誌が発売された。


 

東本昌平さんが描いたVMAXが、表紙を飾る。

2004年5月発行の「BG」


ドキドキしながらページをめくったっけ。

 

 

ステキな思い出の一コマ。

今思い出しても、恥ずかしい。


時々開催されていた

「三京オフ」にも参加するようになった。


土曜の夜に集まり、バカ話しで盛り上がる。

独創性のあるカスタムVMAXを見るのも、楽しかった。


バイクという乗り物は、1人で乗るのも楽しいが、

仲間がいると、もっと楽しい。

みんなと出会えたお陰で、

もっともっとバイクが好きになった。


仲間とは、いいものだ。

 

次のページ 第18話へ→

  

SHOP NAKAMURA トップページへ→