第9話 若い2人、結婚する
新婚旅行の前に、結婚式あたりの話しをしよう。
式が近くなるにつれ、雑用が増える。
式の段取り、引越しの準備、旅行の計画・・・。
決めることが山のようにあり、慌ただしい。
「なんでもいいよ~♪」
まるで人ごとのような公彦、
自分で決める気がまるで無い。
女は現実に生き、男は夢に生きるとは
よく言ったものだ。
もぅ!!
美也子は不満を持ちながらも、
雑務を終わらせる毎日だった。
結婚式前日。
親戚や招待客が続々と柏崎に集まった。
美也子はアパートで、引越しの片づけ。
公彦は仕事をしながら来客を迎えていた。
・・・ハズだった。
「見てみて~♪」
アパートの外に響くエンジン音。
ネクタイにヘルメットの公彦が、窓の外にいた。
友人MJ氏のVmaxに乗って。
友人のバイクを借りて遊ぶ公彦。
明日が結婚式なんですけど?
公彦の友人たちは、全員バイクで来たのだ。
バイクで結婚式に行く。
それが彼らの約束だったらしい。
「美也子も免許あるからコレに乗れるよ~♪」
「え?そんな大きくて重そうなの、無理!!」
「てか、仕事してないの?なら片づけ手伝ってよ!」
「・・・仕事に戻るね~♪」
最後の一行は聞こえなかったらしい。
V4の音だけを残し、いなくなった。
夜。
親戚と前泊客全員で、前祝いの宴があった。
親戚同士の顔合わせや、若夫婦の顔見せである。
初めまして♪(ニッコリ)
美也子は親戚全員に挨拶して回る。
がははは~!(大笑い)
公彦は友人達と同窓会中。
美也子は小声で言う。
(ちょっと!挨拶したりお酌したりしなさいよっ!)
「うん。分かった~♪」
お酒が入り、ごきげんの公彦。
1、2人親戚と話してすぐに友人の輪に戻る。
だめだこりゃ・・・。
美也子は孤軍奮闘、1人ホステスで疲れた夜だった。
現在の公彦側の親戚、中村家に用事がある時は、
美也子の所に来る。
嫁とはそういうものだと、今なら分かる。
こうして女はさらに強くなるのだ。
結婚式に来てくれた、公彦の友人達。
式後に撮ったのだが、
誰が新郎なのか分からないと思いませんか?
式後の夜。
美也子の友人達と飲みに行く。
新婚らしい二人。
疲れがピークでおかしな二人。
二人は比較的早くに結婚した。
ゆえに、夫婦というものは、こういうものだ
という感覚があまりなかった。
能天気な公彦と、わがままな美也子だったが
お互いこんなものかと思っていた。
お金がない、知識がない。何もない。
そんなスタートが、二人には
合っていたのかも知れない。
数日後、新婚旅行へと旅立つ。
旅行先を決めるあたりから、次の話しは始まる。