第10話 二人旅4000km 前編
新婚旅行をどこにしようか。
結婚式の準備とあわせて、行き先を考え始める。
美也子は旅行会社から、
たくさんのパンフレットをもらってきた。
ここもいいよね~。
こっちはどう?
美也子が話をふるが、公彦はまったく興味がない。
普通の旅行じゃダメらしい。
試しにバイクでどこか旅をしようか?と言ってみた。
ピクッ。
あ、反応した。
そうか。ツーリング旅行か・・・。
美也子は一から旅行の情報を調べなおして、
公彦にお伺いをたてた。
若様、オーストラリアはいかがでしょうか?
ニュージーランドも候補でございます。
ん~・・・やっぱ、オーストラリア?
レンタルできるバイク、
BMWとディバージョン900・600とございますが?
それは絶対BMWでしょう!!
せっかくオーストラリアに行くのですから、
後半はダイビングとかしたいのですが・・・。
しょ~がないなぁ~。
じゃぁ付き合ってあげるよ。
はっ!
ありがたき幸せ!
苦しゅうない。よきに計らえ♪
美也子が持ってきた情報を分別する、お殿様がいた。
二人は、ドサ袋とヘルメットを持ち、 オーストラリアに旅立った。
空港の金属探知機を通るヘルメットの画像がおかしくて、
係員も笑っていたっけ。
オーストラリア ブリスベン
ここから旅は始まる。
公彦:ディバージョン900
美也子:ディバージョン600
キャンプ道具一式を借り、説明を聞く。
BMWは数日前にドイツ人が壊してしまったらしい。
殿様、ちょっと不機嫌になったが仕方がない。
ディバージョンで旅支度を始める。
背の高いお兄さんスタッフが、地図を広げた。
「今、ココネ。コノ道を通ってーーー・・・」
「ココがエアーズロック!!」
赤ペンでキューっと一筆書きをしたオーストラリア全土の地図。
それをプレゼントしてもらい、
「イッテラッシャ~イ♪」
旅の案内図はコレだけですか??お兄さん?
本当にコレでたどり着けるのですか?
大陸の人って、おおらかである。
適当な所で地図をもらえと言う。
・・・もらえるモノなんですか??
もらえた。
しかし、途中からは有料に。
地図もガソリンも、
内地に入るほど高い金額になっていった。
いってきますっ!
「あ、3日前に出発した日本人のお兄ちゃんに
プレゼントTシャツ渡し忘れてさ、会ったら渡してよ♪」
1枚余分にTシャツを渡された。
・・・会えるのか???
やはり、大陸の人はおおらかである。
オーストラリアの二人旅が始まった。
1日目に宿泊のモーテル。
フレンドリーなおじさんと。
旅行中、1番キレイな部屋だった。
キャンプもした。
が、二人ともよく眠れず、テント泊は1日のみに。
3日前に出発した日本人にも会え、
Tシャツを無事渡せた。
相手もビックリしていたな。
内地のへんぴな町は、モーテルがない。
コンテナの中にベットがあるだけの宿。
アリと蛾がガサゴソ・・・。気持ち悪い。
ベットon寝袋で寝た。
バイク乗り同士はすぐ仲良くなる。
ドイツ人・・・らしい。
二人でダート三昧・・・らしい。
1ヶ月間、走りまくる・・・らしい。
言葉が通じないのに、なんとなく分かる。
不思議だ。
2日後に、違う町でまた会った。
1日400~700㎞走る。
公彦にはどうということのない距離だが、
美也子にはハードな旅だった。
慣れないバイク・食事・宿。
美也子にとってこの旅は、楽しいのか苦しいのか。
よく分からない旅になっていた。
食事は赤カブ入りのハンバーガーか、
ぞうりのような赤身のステーキ。
それに、大量のポテト。
公彦はごきげんで食べていた。
野菜好きな美也子には、厳しいメニュー。
超ロングなロードトレイン(トラック)とすれ違う時は、
強い風圧にバイクごと押しやられる。
そのたびに体を伏せて、
体勢を作らないと危険なのだ。
公彦が道を間違えた。
数十キロ走ってから気がついた、が、
来た道を戻ると思ったら、美也子は機嫌が悪くなった。
相手のミスが許せない程、疲れていた。
疲れきって、公彦に八つ当たりして。
今ならもっと余裕のあるツーリングができると思う。
でも、あの時のものとは、違うものになるだろう。
下手でも、経験が浅くても、
「走った」のはあの時の自分。
公彦には迷惑をたくさんかけたが、
いい新婚旅行だったと想う。
もうすぐエアーズロックだ。
美也子は2回目の立ちゴケをした。