第18話 新車購入 直後に
公私ともに、充実した日々の中村家。
子どもはすくすく成長し、小学生になった。
幼稚園の時よりも朝が早くなったりと、
生活パターンが少し変わる。変化に慣れるまで、
バイクは少し控えめにしていた美也子だった。
一方、公彦は新しいOFF車購入で悩んでいた。
中古にしようか・・・。
新車にしようか・・・。
やっぱり新車にしよう!!!と決めた頃、
目当ての車両はすでに新車が市場にほとんどなく
あちこち探しまくるハメになった。
東京のバイクショップに展示車が1台残っていることを
突き止め、速攻予約を入れる。
ハイエースで直接買いに行くことにした。
せっかく東京に行くのだから、
友人のとこにでも泊めさせてもらって、
一緒に飲むかな~と考えた公彦。
「帰りはいつになるか、分かんな~い」と、
美也子に言い残し、出発した。
公彦がルンルンで出て行った次の日は、月曜の祝日。
息子は学校がお休み。
美也子はお店がお休み。
母「明日は二人で映画でも見に行こうか~?」
息子「なに見に行く~?
帰りはおいしいもの、食べようよ!!!」
お父さん不在日の方が、おいしいものに
ありつける確率が高い中村家。
お父さんがいなくても、それなりに楽しむのである。
無事、東京でバイクを手にし、
車の中で1人、ごきげんな公彦。
この時、夜の10時過ぎ。
今から友人に連絡するのも悪いかな~と考え、
そのまま帰ることにした。
夜中に帰ってきた公彦。
車からバイクを降ろし、記念撮影をする。
YAMAHA WR250F
バイク人生で3台目の新車購入♪
今年はOFFのレースに出るぞぉ~!!!
足音を忍ばせ、自宅に入る。
夜中に美也子が目覚めると、怖いから・・・ね。
お気に入りのシングルモルトで1人、新車に乾杯♪
明日はのんびり起きて、バイクいじるかな。
美也子が起きると、公彦が布団で寝ている。
あら、帰ってたんだ。
でも昼まで寝ているんだろうな。
予定通り、息子と二人で遊びに行こうっと。
息子と遅めの朝食を食べながら、
美也子はリビングで新聞を読んでいた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・。
ん?
美也子と息子は目を合わせる。
グラッ!
グラララッ!!!ドラララッ!!!グラングランッ!!!
ガッシャーンッ!ガシャーンッ!
中越沖地震である。
テーブルの下に速攻逃げ込む息子。
美也子はそのテーブルを押さえるが、
テーブルごと跳ねてしまう。
「大丈夫かっ!」
公彦が部屋の入り口から叫ぶ。
「二人とも大丈夫!!!」
美也子は叫びながら、
土鍋が棚からUFOみたいに
横っ飛びするのを見ていた。
ここからの1ヶ月は、心身ともに濃密すぎた。
いい人生経験だと思うが、1度で充分だ。
書けばキリがないほど、いろいろなことがあった。
この時の話しは、いつかどこかで、機会があれば。
現実は、毎日確実に過ぎて行く。
3人の生活、会社の未来。
初めて真剣に考えた、公彦と美也子であった。
バイクは将棋倒し。
このまま寝かしておこうか、立てようか、
余震を考えると、難しい選択である。
1晩寝かしたままにしておいたら、
オイルがもれまくっていたっけ。